「言葉はそれぞれに違う意味を持っています。
美しい響きを持っています。その個性を最大限に活かしてあげてください」
私は、セミナーで、よくこの事を強調してお話します。
何を隠そう私自身、言葉の持つ魅力に惹かれ、一生、この素晴らしさを伝えていきたいと思った一人です。
言葉はただの”音声”ではありません。自分の気持ちを人に伝え、相手の心を動かすための、
あなた自身を”表現するツール”なのです。
同期のアナウンサー数人が後ろをむいて一列に並んでいる状況で、誰か1人ターゲットを決めます。
アナウンサーの新人研修で取り入れられている〈言霊ゲーム〉というものがあります。
そして、ターゲットの背中に向かって名前を呼ばず「すみませ~ん」と声を掛け、
振り向くかどうかをテストするのです。
最初は、ターゲット以外の人が振り向いたり、全員振り向いてしまったり、失敗が多いのですが、
不思議と、回数を重ねるにつれ、自分の意図したターゲットだけが、「自分のことだ」と察知し、
振り向いてくれるようになるのです。
これはまさしく、言葉に魂がこもっているかどうかの実験です。
言葉に心がこもり、相手に伝わりやすくなるという科学的な根拠はありませんが、
言葉に自分の気持ちを乗せ、相手に伝えるトレーニングには十分なります。
昨今、インターネットやメール、そのほかの情報伝達ツールがめざましく発達する中、
私たちは、つい、<言葉の力>を忘れてしまいがちです。
伝えにくいことはついメールで済ませてしまったり、インターネットを通じた顔の見えない
コミュニケーションは得意でも、生身の友達は少なかったり、パソコン1台あれば、誰にも会わなくとも、
生活に必要なものは全て買えてしまう…そういう時代が訪れ、言葉を使う必要性が薄れてきているからです。
今よりもっと、情報を伝達する手段が少なかったころ、言葉はもっともっと輝いて、
人の心を打つエネルギーを持っていました。
そして、それは今も変わっていません。私たちが、言葉を楽しみ、追求し、選び、
遊び、作り出すことが出来たなら、人の心をうつひと言は、誰の口からでも発することは出来るのです。
KEE’S代表 エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈