■相手を見極めて会話の仕方を工夫する
人は誰でも話すことが大好きです。
無口な人も、取っつきにくい人も、人前でそうした印象を与えているだけで、基本的には話すこと自体が嫌いなのではありません。
うまく言葉が出てこないとか、緊張してしまうとか、何か別の要素が話し好きな気持ちを抑え込んでしまっているのではないでしょうか。
事実、話すことが苦手な人でも、たとえばアイドルやアニメやコンピューターなど、あるいくつかの分野では饒舌になる例はよくありますよね。
人は好きな話をするときにはとても気持ち良くなります。
だから、止まらなくなるぐらいにいろいろと話ができるのです。
ただ話したがらない人の特性として、何もないところから話のきっかけを作るのが下手という点はあるでしょう。
そういう人には、その人の興味に引っかかるような質問をこちら側から投げかけてあげましょう。
質問されれば、誰でも答えざるをえず、閉じた口を開いてくれます。
ただ注意してほしいのは、イエス/ノーで答えられるような質問をしないこと。これでは、ひと言で返されてしまいます。
それよりも、なぜ、どうして、いつ、どこで、どのように、といった文章で返答しなければならない質問を投げかけること。すると、その返答の中に次の質問のキーワードが含まれているはずです。
それをうまく見つけ出して、次の質問につなげていくわけです。これが話題を広げる基本のテクニックです。
私たちのような企業研修や社員教育の仕事をしていると、どうしても社長や役員、重要ポストに就いている方など、会社の偉い方々とお会いする機会が多くなります。
特に社長として頂点に上りつめた方には、プライドが高かったり、マイペースで持論を絶対に曲げなかったりする方がたくさんいらっしゃいます。そういった一見苦手と思われがちな方々に接してこそ、私たちの腕の見せどころです。
こうした方々は気難しい人物が多いのですが、一旦気に入られると断然お付き合いが深くなります。
重要なのは、この人にできるだけ付いていくぞ、という揺るぎない心構えです。
人それぞれですが、相手のペースにしっかり乗っかっていくこと。これがポイントです。うまくいけば、「可愛いヤツめ」となりますよ。
もし常に上から目線の威圧的な人だったとしても、そのペースにしっかり従います。
相手が上から来たからといって、こちらからも抵抗や攻撃を仕掛ける必要はまったくありません。とっつきにくい人にも素直に頷き、ゆっくりとうとうと語る人にはこちらもゆっくりとした口調でのぞむのです。相手のペースを邪魔せずに合わせてあげると、相手はとても気持ち良く話を続けてくれます。
早口でまくし立てるように話す人も困りますよね。しかも途中で口を挟んで聞き返すとムッとするタイプは大変です。きっと頭の良い方なのでしょう。こちらが何でわからないのかということがわからないのだと思います。
こういうケースでは、相手に好きなだけ話してもらい、しっかり聞き耳を立てて大切な言葉をきちんと捉えておくこと。あとのどうでもいい部分は聞き返したりせず、流してしまえばいいでしょう。
余計な邪魔をせず、話してもらいます。ただし、どうしても聞きたいこと、確認しておきたいことがあったら、それは最後に尋ねます。一通り話してしまうと、相手は満足し、口をつぐむ時間が訪れます。そこですかさず重要事項を確認するのです。相手は気分が良くなっているはずですから、大抵の場合、こちらの尋ねる内容にはきちんと答えてくれます。
多くの人に面会する仕事をしていると、どうしてもこの人とは合わないな、と思える人に出会うこともあります。人との相性は誰にでもあるものです。
しかし、だからといってこれはビジネス。そういう人を避けて通るわけにもいきません。
相性が合わなそうな人というのは、向こうもそう思っているのでしょうか、最初から目の前に壁を作って接しようとします。そんなときにこそ、仕事美女は相手のホンネを引き出そうと燃えましょう。一旦防御する壁を取り除けば、その人のホンネや気持ちがきちんと見えてくるものです。
相手は自分に対して心を凍りつかせています。だったら、その心を溶かしていきましょう。いきなり迫っては壁はますます厚くなるばかり。
相手の自己防衛を崩すには、下手で丁寧な言葉を意識的に使って、「いかがですか?」「どう思われますか?」といった形で、相手に常に会話を委ねるように仕向けていくのです。
委ねられると、会話の主役は相手になり、話さざるを得なくなります。こうして焦らずにひとつひとつ投げかけ、相手の言葉をどんどん引き出していきます。その答えに真摯に向き合っていけば、きっと目の前にあった壁はなくなるでしょう。
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KEE’S代表 エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈