魅力的なスピーチに必要不可欠なもの
「僕は社説を読んでも、ニュースを見ても何も感じない」という生徒さんはとても多いものです。
「では、次回の授業までに感動したり、気になった記事を切り抜いて持ってきてください」という宿題を出すと、きちんと持ってこられます。
けれど「この記事のどこに感動しましたか?」と聞くと、うまく説明できない。
「よくわかりません」になってしまう。
それも仕方のないことです。日常生活において、ニュースや身の回りの出来事に関して、自分なりの意見を持ったり、発表する機会はありません。
マスコミの人間ならいざしらず、普通は、ニュースを見ても「自分には関係ない」と思ってしまうものかもしれません。
ただし、スピーチ上手を目指す場合、情報は即、スピーチのネタに成りえると思って、受け止めてください。
そして、情報は理解して終わりではなく、そこから『どう感じたのか?』感想を頭の中でまとめてみることをお勧めします。
ニュースは喜怒哀楽を通じて噛み締めない限り、ただ右から左に流れ去っていくもの。
話題の引き出しに、自分のものとしてしまうには、理解→感想のプロセスをとらなければならないのです。
スピーチで相手の心を動かすには、まず自分がその情報に何倍も感動することが大事です。
「おお!」「ほお」とまず自分の心が動いて「誰かに伝えたい!」と思ったことでなければ、どんなにロジカルに話したところで、聞き手の心は動かないといえます。
日頃、「あまり心が動くことはないなあ」という人。今日から、ニュースを見たら、いちいちその状況を自分に置き換えて想像してみてください。
自分がこの被害者の親だったらどうだろう? 恋人だったらどうだろう? 自分が日本の首相だったらどうだろう? 想像してみてください。
あなただったらどう感じますか? どう行動するでしょうか? ニュースのなかの人物があなたと同じように行動しないのはどうしてでしょう? そこにはどんな事情があるのでしょうか? それを考えるだけで、どんどん思考は掘り下げられていきます。
KEE’Sのセミナーでいつも申し上げること。
魅力的なスピーチに必要な三大条件とは、
・伝えるテクニック
・伝える内容
・伝える熱意
この3つが備わっていなければ、人の心は動かせないのです。
〈伝えるテクニック〉とは発声や表情、パフォーマンス。早口にならない、
「えーあのー」を多用しないなどの話し方の基本テクニックのこと。
〈伝える内容〉とは、ロジカルな構成のこと。
そして、〈伝える熱意〉とはそのまま「自分の話すことを聞いてほしい!」「自分が感動した出来事をあなたにも伝えたい!」という情熱です。
「世界一、聴衆を魅了する」といわれているアップル社CEOのスティーブ・ジョブズ。
彼が講演をするイベントには席を確保するため、真冬にもかかわらず徹夜で並ぶ人が出るといいます。
それほどまでに、なぜ人々がジョブスを求めるのか?
それはジョブズの卓越した〈伝えるスキル〉。
一切の無駄をそぎ落とし、精巧にロジカルに練り上げられた〈伝える内容〉。
それに加えて、ジョブズ自身が自社製品を心から「超クール!」と思い、その感動を聴衆に伝えようとしているから。
ジョブズ自身の〈伝える熱意〉が一企業の商品PRを何か別次元のもの、聞く人の心を振るわせ、熱狂させ、夢の彼方へといざなっていく、ひとつのエンタテインメントに仕立てあげているのです。
まずはあなた自身の心を振るわせる出来事を日常のなかから拾っていきましょう。