以前、オンライン会議や商談における、ファシリテーションスキルの重要性についてお伝えしました。
今回は、オンライン会議進行の地図となる、OARR(オール)についてお話します。
OARRとは、グローブコンサルタンツであるディビッド・シベッツが開発した、会議の方向性を明確に定義・共有するためのフレームワークです。
フレームを構成する、Outcome(成果・ゴール)、Agenda(議題・スケジュール)、Role(役割)、Rule(約束)の頭文字を取り、また、全員がオールを持って航海するイメージから、「OARR(オール)」と呼ばれています。
まずはOutcome、つまり、その会議が目指す成果やゴールを言語化して相手と共有します。
例えば、会議の最終的なゴール、「新製品Aの発売日に向けたプロモーション計画を具体化する」といったことがそれにあたります。これを伝えることで、参加者全員がその会議の目的を共有することができます。
次に、そのために議論すべき課題、つまりAgendaの伝達です。「予算をどう配分するか」「どの媒体に重点を置くか」「プロモーションのテーマを何にするか」といった、話し合っておくべき議題がそれにあたります。この議題に何分、すべての議論の時間は何分、というふうに、おおまかなスケジュールも合わせて伝えておけば、参加者は会議の進行のイメージをつかみやすくなります。
次がRole、つまり会議において、それぞれの参加者に期待する役割です。役割は、会議の主催者側、参加者側の双方にあり、それをすべて言語化して共有します。例えば、
「予算の判断については●●部のAさんとBさん」「媒体特性の情報提供は●●チームのCさんとDさん」「プロモーションテーマの提案は外部ブレーンのEさん」というように、期待する役割をはっきりさせておくことが大事なのです。
対面の会議の場合は、目くばせやジェスチャーでなんとなく「あれやっといてね」ということを伝えたり、流れや雰囲気で誰がその議題を引っ張るべきなのかがなんとなくわかるということもあるかもしれません。しかし、オンラインの場合はそのような暗黙の了解や以心伝心は通用しません。対面の時のように、何となく誰かがやってくれるのではと、役割分担をあいまいにしておくと、結局誰もやらなかったというようなことにもなりかねません。
一方で会議の冒頭で、それぞれが果たすべき役割を言語化して全員でシェアしておけば、自分はこの会議で何を考えるべきなのか、どういう発言をするべきなのか、というように、参加者がそれぞれに自分なりのプランをもつことができるので、議論はスムーズに進みます。また、他の人がどんな仕事を担っているのかもわかるため連携がとりやすくなるというのも大きなメリットです。
相手が取引先などの場合は、お願いしたい役割を伝えることを躊躇したり、相手がこちらの意図を汲み取ってくれるのを待つ、ということが往々にして起こります。
けれども、オンライン上のコミュニケーションの場合は、時間も限られているので、対面よりもロジカルに会が進行しても違和感はありません。その特性を良い方向に利用し、「御社にお願いしたい役割はこれです」というような率直な要望も、言語化して伝えましょう。そのおかげで、対面よりもむしろ会議がスムーズに進むということも十分あり得ます。
最後のRuleとは文字通り、その会議の約束事です。
例えば、「予算内の提案しかしない」「過去に実施したプロモーションは候補から外す」「必ずデータに基づいた提案をする」「ひとりの発言は2分以内」といったルールを決めて、先方にそれをあらかじめ伝えておけば、効率的で質の良い議論ができます。
また、オンラインの場合は「あうん」の呼吸が通じないことを踏まえ、
「『伝わっているつもり』にならず、明確にできる5W1Hなどの要素をきちんと伝える」
「イメージの相違がないよう、抽象的な言い方は避け、具体的に伝える」
といったことも、確認しあっておくと良いでしょう。
さらに、
「他の人の話に切り込むときは自分の名前を言い、許可をとってから話す」
「切り込む時は、相手の気持ちにも配慮する(アサーティブな主張をする)」
「建設的な意見を心がける」
などの、オンライン上のマナーとしてのルールを明確にしておくことも、基本的ではありますが有効な場合があります。
というのも、相手の気持ちが読みづらく、心理的距離も生まれやすいオンラインの場合、どうしても、相手への配慮という意識が抜け落ちやすくなるからです。あらかじめルールとして定めておけばそのような意識も働くので会議がより建設的に進むでしょう。
会議の方向性が共有できたところで、いよいよAgendaに沿って会議を進める上でのポイントについて、次回お伝えします。
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本コラムは、著書『オンラインで伝える力』の中から一部を抜粋・編集しています