このコラムでも度々取り上げてきた、ロジカルシンキングの技術。
ビジネススキルの中でもとりわけ脚光を浴びてきたように、仕事をする上で論理的に考えることには多くのメリットがあります。
ロジカルであることは思考法にとどまらず、考えることと表裏一体である話し方においても必須です。論理的に情報を整理できていれば、端的にわかりやすく、伝えたい事を効果的に伝えることができます。
それだけでなく、論理的であることには、「公平さが保たれること」という別のメリットもあるのではないかと私は思っています。
例えば、部下のA君の営業成績が低いことを指摘しなければならない時に、
「君、先月の営業成績は何だ? 目標に30%も足りていないじゃないか」
というところから始まり、さらには、
「最近、たるんでいるんじゃないか」
「やる気がないんだろう」
というような話し方をするリーダーは珍しくありません。
しかし、「たるんでいる」とか「やる気がない」というこの判断は、具体的な根拠がありません。論拠がない論理展開は「誰もが納得のいく論理」とは言えず、上司自身の主観のようにも見えます。
営業成績が悪い原因のすべてが「たるんでいること」にあるのかという点や、そもそも部下が本当に「やる気がない」のかどうかの証明がなされていません。リーダーの主観に左右される評価では、公平さは保たれないでしょう。
では、どうすれば、真実が見えるのでしょうか?
例えば、日々の部下の変化に気づいた時にアドバイスをするような際にも、ロジカルシンキングの手法を用います。
部下の状況を評価する要素を表にし、点数をつけて総合的に分析するとどうでしょうか。
営業成績だけでなく、プライベート、勤務態度、遅刻欠勤、パフォーマンス、モチベーションなど、部下のその時の状況を項目ごとに評価するのです。数字などを元に正確な評価ができる項目や他の社員へのヒアリング、あなた自身が気付いたことなどを入れても構いません。これは人事考課ではないので、あくまで、あなたが部下を客観的に捉えるための表づくりと考えて下さい。
そのような表を作ってみると、確かに営業成績は悪いものの、実は悪い所よりも良い所が多い、しかも、勤務態度、人柄、モチベーションといったヒューマンスキルも高い優良社員であるという、A君の真実の姿が浮かび上がってきます。これを見れば、モチベーションが高いのに、「やる気がない」などと叱るのは客観性に欠けていることに気づくでしょう。いいところがたくさんあることがわかれば、例え改善点の指導をするにしても、違う伝え方になるはずです。
このように、論理的に情報を整理すれば、間違った主観を混ぜ込むことを防ぎ、きちんと論旨の通った考え方、話し方ができるようになります。さらには、誰に対しても公平な姿勢でいることもできます。
また、公平な視点から導き出された論理は、誰もが正しいと信じ、異論をはさむことが出来ない強い論理でもあります。
エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈