英語のプライベートレッスンの初回でのこと。自己PRをしてほしいと講師に促され、つたない英語でなんとか話したところ、ネイティブ講師は「あなたの英語は上手とは言えないかもしれないが、話はとてもおもしろい。聞けて楽しかった」と。続けて「日本人の方は自己PRの場で、仕事の話、しかもどれだけ大きな仕事を自分が成功させたかという話ばかりするので辟易していた」とポロリと漏らしました。
「自己PR」=「自分がどんなにすごい経験をしたかをアピールすること」と思っている方がいますが、実は違います。自分の価値観を自分らしい言葉で語ることが自己PRです。何気ない出来事の中にも、自分しか感じられないことがあります。
と言っても、突然「あなたらしさって何?」と聞かれると答えに悩んでしまうかもしれません。違う切り口で考えるとどうでしょうか?「ちょっと自慢したいこと」「自分なりのこだわり」「人とは違っているところ」これらなら考えられるのではないでしょうか?日頃の行動パターンや趣向が「自分らしさ」を相手に伝えるヒントになります。
例:
「キャベツの千切りが得意です。半分を千切りするのに1分かかりません」
「駅でも会社でも、絶対にエレベーターやエスカレーターは使いません」
無理に自分を大きく見せる必要はありませんし、誰もやったことのない珍しい経験がなくても良いのです。ごく身近な話題で十分です。規模の大小や希少性が話の面白さにつながるのではありません。話し手の個性が光る話であれば、聞いていておもしろいものです。
「自分って何だろう?」「自分の魅力って?」と真正面から結論を導き出そうとすると、案外難しいもの。でも、自分を構成する要素の一片を話すことで、相手に自分という人間の一部を感じ取ってもらうことは簡単にできます。
さらに、「なんで私、こんなに柔軟剤が好きなんだろう?」と考えていくことで、自分の価値観や性格、考え方などが見えてくることがあるかもしれません。
ちなみにビッグプロジェクトの話をすること自体が悪いと言っているわけではないので、ご注意ください。ただ、プロジェクトのすごさをひたすら語るのではなく、そのプロジェクトをうまく回すためのちょっとした工夫や失敗談など、同じプロジェクトに参加している他の人には語れない、自分ならではの角度からプロジェクトを語ることができれば、聞き手にとっても興味深い話になるのではないかと思います。
KEE’S代表 エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈