毒舌は会話のスパイスにもなり、笑いを取れることから許容されている部分がありますが、実のところは「悪意」が含まれているものです。お笑い芸人には許されていることでも、日常生活で安易に口にするのはリスクがあります。
ビジネスシーンでは、人間性を否定するような毒舌にまで発展することは稀ですが、家族など関係が近いほど、つい言ってはいけないことに触れてしまいがちです。
例えば、奥さんのことを「昔は社内一の美人だったのに、だまされた~‼」とか、部下に対して「吉田は元気はいいけど、要領は悪いね」など。言っている本人にとってはちょっとした冷やかしのつもりでも、言われた相手は決して気持ちの良いものではありません。また、言った本人は忘れていても、言われた方はずっと覚えているものです。
毒舌の怖いところは、エスカレートしがちなところです。「毒舌を言ってもいい」と認識した相手には、どんどん辛辣な言葉を投げかけるようになります。いったんそういう関係になると、修正するのはなかなか難しく、次第に優しい言葉がなくなります。そんな関係は、ちょっとした瞬間に爆発して壊れてしまうことも往々にしてあるのです。
さらに、毒舌はクセになります。言ってはいけない相手にもつい言ってしまったりするのです。「笑えるからいい」「そういうキャラだと認識されている」と自分では思っていても、笑えるかどうかの基準は人によってずいぶん違うもの。独りよがりに判断して、エスカレートすると危険です。
人は自分が話す言葉のような人間になっていくものです。
毒舌を言う前にちょっと立ち止まってみましょう。本当に口にしていいものなのか、その場にいる人全員が心から笑えるものなのか、考えてみてください。その場で笑いが起きているように見えても、表情がひきつっている人が一人でもいたらそれは失敗です。
毒舌が言える人は頭の回転が速い人です。毒舌で安易な笑いを取りに行くより、どんなことでも「ポジティブに変換して回りの人を良い気分にする」ことを考えてみてはいかがでしょう?
かつてと変わってしまった奥さんには「昔は綺麗で近寄りがたかったけど、ずっとそばにいてくれる今はもっといい、結婚して良かった」、不器用な部下には「元気の良さはピカ一だな、職場の雰囲気が明るくなるよ」など、悪いところをくさすのではなく、いいところを積極的に取りあげてください。気を許した相手にこそ優しい言葉を。優しい言葉を放つあなたのそばには優しい人が集まってきます。
KEE’S代表 エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈