報告のSTEP3〈WHY〉・STEP4〈HOW〉
〈戦略的報告〉はここからがスタートです。
言ってしまえば、〈4W〉は事実ですから、誰にでも言えること。他人と差をつけ
、一目置かれるためには、皆が気づいていないことを報告しなければならない。それがあなたの武器になり、あなたの評価へとつながるのです。
戦略的であるためには、表面的な基本情報から一歩踏み込み、あなた自らが「なぜ?」と考え、掘り下げていくこと。
それがすなわち〈WHY〉と〈HOW〉になります。
〈WHY〉は今回の〈結論〉に至ったのはなぜかを掘り下げること。
報告には、良い結果、悪い結果の2パターンあります。悪い結果のときは問題点を、
良い結果のときも「どうしてうまくいったのか?」を考えること。
そういうポジティブな理由は一見、必要ないように思えますが、
「うまくいった! よかったよかった」ではなく、結果を客観的に分析するのはビジネスにおいて重要なこと。
もしかしたら、単なる偶然、ラッキーが要因かもしれないのです。ラッキーは二度は続きません。そこでしっかりと気を引き締め、いつでも戦略的に目標を達成する。その姿勢が、<デキル感>を高めてくれます。
さらに、その〈WHY〉には必ず〈HOW=対策〉を述べます。
まずは、悪い例から紹介しましょう。
〈報告・悪い例〉
お客様の感触としましては、購入に興味のある方も十分いらっしゃったと思います。
今回、販売をかけましたA~D地区では思うように結果が出ませんでしたので、次回はE~H地区にターゲットを変更します。
また、先月の営業に関して「人員不足だ」との声も上がったことを報告いたします。
もろもろ課題もありますが、ターゲットや営業体制を見直し、来月はなんとかより多くの台数を売っていきたいと思います。
この報告のどこが悪いか、一度あなたなりに考えてみてください。
〈WHY〉と〈HOW〉が聞き手に説得力をもって伝わっているでしょうか?
では、悪い点を具体的に挙げていきます。
①「お客様の感触」の裏づけがない
「お客様の感触」とはどこから上がってきた情報でしょうか? アンケート調査なのか、個別に聞き取ったのか、〈裏づけ〉が示されていないので信用に足る情報か判断できません。「自分がそう感じたから」では、報告に値しないのです。客観的な視点によって、裏づけされていない情報は入れない。もしくは『これは私の感想でありますが・・』と主観と客観をきっちりと分ける。これが報告の鉄則です。
②「A~D地区で結果が出なかった」理由が述べられていない
なぜ「A~D地区で結果が出なかった」のか? その原因が知りたい聞き手からは当然、質問が出るでしょう。ここでは、理由がないまま、結果からいきなり、来月の対策へと飛んでしまっているので、聞き手が置いてきぼりになります。「WHY(原因)とHOW(対策)はいつもワンセットで」と覚えましょう。
③「E~H地区にターゲットを変更する」理由も述べられていない
なぜターゲットを変更する地区が「E~H地区」になったのか? その理由が述べられていないため、これも聞き手にとってはストレス。聞き手にわざわざ質問させる前に、きちんとその理由も述べなければなりません。WHY(原因)とHOW(対策)はいつもワンセットの原則は、ここでも同じです。
④「人員不足」との声はどこから上がってきたのか分からない
誰の声かが述べられていないため説得力に欠け、さらにそれに対する〈HOW〉も「営業体制を見直し」というだけで、具体的に述べられていません。聞き手から「それで、どうするの?」という質問が出るでしょう。
⑤「より多く売っていきたい」では具体性がない
報告に盛り込むのは客観的で具体的な情報でなければなりません。「より多く」では、一体何台売るのが目標なのか見えず、あなたのやる気そのものも疑わしく感じられます。
「もろもろ」「たくさん」「いろいろ」などという抽象的な表現はできる限り避け、具体的な数字、客観的な事例に置き換えられるかどうかを考えましょう。同様に「来月は頑張って達成したい」というような感情論もNG です。
ここでも「具体的な目標は何台なんだ?」との質問が出るでしょう。もしかしたら、穴だらけの報告にうんざりして、聞き手も質問する気力を失っているかもしれません。
以上を改善した例で見てみましょう。
〈報告・良い例〉
「なぜAZの販売台数が目標に満たなかったのか?」という点ですが、考えられる原因は2点あります。1点はターゲットミス。もう1点は営業体制ミスです。
ターゲットミスに関しては、販売をかけたA~D地区は駐車場が不足しているということ。また同地区の家主の7割が50代以上で定年が近く、高級車の購買意識が薄かったことが挙げられます。
もう1点の営業体制ミスですが、20人体制では7000戸の訪問予定も、5000戸が限界であったことが挙げられます。
これらの原因に対する対策を考えました。
まず、ターゲットミスに関しては、空き駐車場の多いE~H地区を来月の販売強化地区にします。同地区は年収700万円以上の40代が家主に多く、所有車が5年以上を経過している世帯も多いということが我が部の調査の結果、わかっています。
営業体制ミスに関してはスタッフを30人体制にし、再度7000戸の訪問を目指します。
きっと、この報告者は先月の結果を受けて、自分なりにいろいろ考えたのでしょう。
それがロジカルに整理され、報告されています。
悪い例の報告者も販売強化地区を「E~H地区に変更する」と言えているのですから、
もしかしたら同じくらい考え、調査もしたのかもしれません。でも、そのアピールすべき理由が抜け落ちている。
客観的な要素をしっかり盛り込めているかどうかで、同じことを考えていても、
受ける印象がまるで違うということがおわかりいただけたでしょうか?
また〈WHY〉と〈HOW〉に関しては、それぞれを対応させて述べることがポイントになります。
Aという〈WHY=問題点〉に対しての〈HOW=対策〉、
Bという〈WHY=問題点〉に対しての〈HOW=対策〉が聞き手にしっかりと伝わるように、整理して述べること。
〈WHY〉と〈HOW〉がバラバラでは意味がない。〈WHY&HOW〉と対応してこそ、この報告が光るのです。
また、WHY&HOWに書き込む情報が多くなる場合は、それぞれのボックスの下に、枝分かれさせたボックスをいくつか作り、そこに情報を書き込んでも構いません。