スピーチに正解はない、という話の後編です。前編はこちら。
ミス・ユニバース・ジャパン公式スピーチトレーナーをしていく上で気づいたことですが、「日本一の美女」として選ばれたミス・ユニバースの日本代表の彼女たちでさえ、最初はまったく自信を持っていません。
実は、ミス・ユニバースは外見だけでは選ばれません。最終審査で問われるのが「あなたという人は、どんな価値観を持ち、どんな人生を歩んでいますか」という問い。世界中が注目する中、ぶっつけ本番、舞台上で、審査委員から問われるさまざまな質問に、30秒で答えなければならないのです。
そのため、ミス・ユニバースの地方大会から世界大会に出場するまでの1年半の間、私は彼女たちに「徹底的に自分と向き合うこと」を求めます。
自分が大切にしている物、人、考え方、価値観、社会のあらゆる問題に対する思いや考え、そして、今までの人生とターニングポイント、これからの人生……
できるだけ多くの質問を自分に投げかけて、自分という人間に考えさせ、答えさせる。そんな作業をしてもらいます。そして、自分という人間のことを良く知ることができ、確信がもてたら、次は言葉に出すというアウトプットの作業です。
2011年にミス・ユニバース日本代表として世界大会にも出場した神山まりあさんは、日本大会の最終審査で「あなたの思う、美しさの概念は何ですか」という問いにこう答えました。
「10年後も、道端の花を見て美しいと思える心。そしてそのような女性でいたい」
その答えは最も彼女らしく内面の美しさを表現する答えだったので、トレーニングに携わった私の印象に強く残っています。
「自分らしく」生きるというのは、美しくあるためではありません。自分らしく生きている人が、結果的にキラキラと輝くオーラを放ち、周囲を魅了するのだと思います。
自分を表現することは、今からでも遅くはありません。外見美と違って、ダイエットも整形も必要ありません。いつでも誰でも始められるのです。
KEE’S代表 エグゼクティブスピーチトレーナー 野村絵理奈